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月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)とは、月経前の3~10日の間にイライラ・怒りっぽい・気分が落ち込むなどの精神不安症状や、お乳が張って痛む・頭痛・顔面や下肢のむくみ等の身体症状があり、月経開始とともに症状が減退・消失するものを言い、月経前緊張症(PMT)とも言い、症状は200~300とも言われています。また、PMS症状を有する女性の2~10%が日常に支障をきたしていると言われており、女性にとっては大変深刻な疾患と言えます。

原因は現在も不明な点が多く、女性ホルモンからくる多岐にわたる要因が相互に関与して起こると考えられています。(性格説・心因説・エストロゲン過剰説・プロゲステロン不足説等)年齢移送は20代~40代前半の幅広い。

治療としては、日常的に適度な運動、水分や塩分の摂取制限、また薬物療法として、低用量ピルの服用、カウンセリング等があります。

月経前不快気分障害(PMDD)

PMSと比較して、より精神症状(苛立ち、易怒感、抑うつ、眠気等)が主体となる症候群。PMSとの区別には、『月経前不快気分障害研究用基準』があり、この基準を用いて区別ができます。

PMSは鍼灸適応疾患であり、その効果については論文でも発表されています。

参考文献
1)田口怜奈・松原.Acupuncture for premenstrual dysporic disorder.arch Gynecol Obstet.2009;280(6):877-81

東医的分類

東洋医学では、子宮・卵巣を「女子胞」「子所」「胞宮」等と称します。(ここでは女子胞といいます。)

女子胞は「腎」「肝」「脾」と関係が深く、生理機能は「衝脈」「任脈」「督脈」「帯脈」の四脈の支配を受けています。これらの四脈は外は十二経脈と連なり、女子胞と全身とを連絡させ、女子胞の正常な生理機能を保持しています。

  • 腎:「胞絡は腎につながる」
    腎は先天の本(元気の元;生命維持をしてくエネルギーのようなもの)であり、精(ホルモン等)を蔵し、人体の成長・発育・生殖の根本です。
  • 肝:肝経は任脈・督脈の二脈を通じて女子胞と関係しています。また、「肝は血を蔵し(血の貯蔵)、疏泄を主り(血液循環を調節)、血海を制御する(血量の調節)」といわれています。
  • 脾:脾は任脈に通じ、間接的に女子胞と関係しています。「脾は後天の本で、気血の原材料であり、後天の本(食などから摂りこまれた栄養を吸収し、気血をつくり生命の維持をしている)である」といわれ、脾が統摂(もれないように月経血を調整する)する血が、月経・妊娠の機能に物質的基盤を与えています。

病因病機

PMSは以下の4つに分けることができます。

1)肝欝気滞

『肝は疏泄を司る』といわれ、血液運行や津液代謝を促進したり、精神活動も調節しています。

肝欝気滞証とは、ストレスや長時間の同姿勢により、気の流れが滞ると、臓器など身体全体に気血津液が巡らず、エネルギーが補給されないため、充分な働きができなくなります。また、滞っている場所ではそれがストレスとなり、様々な症状を引き起こします。肝の機能がうまくいかないと、月経前に、頭部で滞りがおこりやすくなる。イライラしやすく怒りっぽくなったり、のぼせや不眠になる、外出したくない、人との付き合いを避けたくなる、不安になる等の不調を起こします。胸部で滞りがおこると、息苦しい、胸が締め付けられる、胸や脇が張って痛くなる等の症状がでます。また、下腹部で滞りが起こると、衝・任脈の運行(子宮と深く関わりがある)が順調でなくなり、月経が遅れたりします。また、全身の気の流れがうまくいかないと、消化や精神面、ホルモンバランスに影響しやすくなります。便秘や食欲が亢進したり、卵巣の流れが悪くなるとホルモンもバランスが悪くなり、月経も正常ではなくなってしまいます。女性の身体は女性ホルモンによって体調が大きく左右されます。ホルモンを出す指令がでても、うまく作用しなければ充分な機能を果たせず、身体の不調に繋がるのです。

みられる症状
  • 抑うつ傾向
  • 怒りっぽい
  • 不眠
  • 梅核気(喉になにか詰まったような感じ)
  • 下腹部やお乳が張って痛む(痛みより脹りの方が強い)
  • 便秘(お腹が脹って苦しい)
  • 下肢のむくみ(脹った感じで、押しても痕が残らない)
  • 肩こり(脹って痛む)
  • 月経不順(早くなったり、遅くなったりする)
<治則> 疏肝解鬱・活血調経

気の流れを良くして、血が滞りなく流れるようにします。気血の流れがスムーズになると滞りも解消され、エネルギーが身体全体にいきわたるようになります。また、崩れていたホルモンバランスも正常になります。そうなると、精神面が安定したり消化がよくなる、PMSの症状改善につながります。

2)肝陽亢進

「亢進」とは、交感神経が大きく優位になり身体のバランスが崩れることです。
肝火上炎と肝陽上亢に分類されます。

  1. 肝火上炎は陰気(身体の中の水)が正常なのに対し、陽気(身体の中の火)が強すぎてしまい、水が火を抑制できなくなった状態です。陽気は決して悪いものではなく、身体を温め臓腑の機能がスムーズに働くようにしています。ですが、陽気が亢進してしまうと身体の火が燃え上がり、気血の流れは上方へ上がり、熱が上に溜まってしまいます。
  2. 肝陽上亢は陰気(身体の中の水)が不足し、陽気(身体の中の火)を抑えられないため陽気が増えてしまった状態、または、陽が亢進しすぎてしまったために熱(火)により陰気(身体の中の水)が消耗し、さらに陽気(身体の中の火)を抑制できない状態です。
    身体の中の水分が不足するため、身体の中の火を押さえることができずに上方向へ上がり、上に熱が溜まってしまいます。
1.肝火上炎

身体の中は肝の疏泄機能(気血津液が順調に流れること)によって、滞りなく身体の隅々まで廻ります。疏泄機能が低下することで、気が身体をめぐることができず、滞ってしまいます(気滞)。気滞により、そこでさらに摩擦がおこり、熱が生じます(化火)。この生じた熱を中医学では「内火」といいます。火は炎上性がある為、下から上へとあがり、血も一緒に上がるために充血がおこったりします。交感神経が亢進して、血管が収縮し、血が流れたくても流れにくく、血が充血した状態です。月経前に強くみられる症状として頭部では脹ったような頭痛が起こったりめまいがしたり、また、頭に血が上っているためにイライラして怒りっぽくなったり、精神的な症状にも作用します。イライラで心が落ち着かず、不眠や悪夢を見るなどの症状も起こります。また、上に上がった熱のせいでうまく気血が巡らないため、肩こりや目の疲れ・充血もみられます。

みられる症状
  • イライラする
  • 怒りっぽい
  • 脹った様な頭痛(ドクドクするような頭痛)
  • 不眠・夢を多くみる(ストレス等でイライラして眠れない)
  • 興奮しやすい
  • 動悸がする
  • 顔面紅潮(熱が上にあがって下りない為)
  • 耳鳴り(大きく、高い音がする)
  • 目の充血
  • 脇肋部灼痛(脇が焼けるように痛い)
  • 月経周期が早まる
  • 経血量は多く、ダラダラと滲み出る など
<治則> 清肝瀉火

身体の中に異常発生してしまった熱を取り去る治療をします。上に上逆した身体の過剰な熱は鎮静・昇散(ちらすこと)します。つまり全身の異常な熱を汗や尿とともに身体の外へと出すよう促進し、頭から発散すると、気血津液がうまく循環され、ホルモンバランスが整い、PMSは消失して月経も正常にくるようになります。

2.肝陽上亢によるもの

ストレスなどによる情志の失調、加齢などによる津液(水)不足が原因でおこります。

  1. ストレスなどによる情志の失調によるもの(肝陽亢進)
    ストレスなどにより身体で火(内火)が燃え上がり、水が不足します。気の流れが上方向に向かい、気血津液がうまく降りれず、身体を巡ることができなくなる気血津液の循環不全が原因です。
  2. 加齢によるもの(陰虚がベースにある)
    加齢で津液(水)が不足し、身体の熱を抑えることができずに、熱は強くなり、気の流れが上方向へ一方通行となっている為、上に熱が溜まります。身体の水が不足して、肝陽(内火)が勢いを増すタイプです。年齢を重ねると、身体が乾燥しやすくなるのはこのためです。

肝陽上亢は、上に熱が溜まることでイライラしやすく、怒りっぽくなります。怒るとさらに火は燃え上がり、益々水が不足する為、症状は増悪します。

みられる症状
  • 怒りっぽい・イライラ
  • 張った様な頭痛
  • 不眠
  • 耳鳴り(大きく、高い音がする)
  • 顔面紅潮(熱が上にあがって下りない為)
  • 五心煩熱(手掌・足底が熱い)
  • 足腰のだるさ
  • 月経周期が早まる
  • 経血量は少ない、期間が長くなる など
<治則> 滋陰補腎・平肝潜陽

腎陰(水)が不足することにより、肝陽(内火)が亢進しているため、腎陰を補い、熱を抑制し、身体の水が補われることで熱が燃え上がるのを抑えます。
また、上部に上がりすぎた陽気を下にひっぱる治療をします。

3)肝腎陰虚+気滞

肝腎陰虚は、肉体疲労、慢性的な疾患などにより肝陰・腎陰が共に失調し、血も絶対量が減少してしまいます。

「肝」は血液貯蔵と血量調整の作用があります。また、「腎」は「腎精」を蔵し、腎精は人体の各種機能を支える基本物質で、生長や発育、生殖に深く関わっています。『肝血は腎を滋養し、精(生命の源)を生成する』といわれています。肝陰と腎陰は相互に不足すれば補い合い、衰退すれば同時に虚しやすくなります。また、『腎精は肝を滋養し、血を生成する』といい、“血”の基礎となるものは“精”であり、精が血に転化するための原動力は気です。

肝腎陰虚は眩暈や健忘、耳鳴りをひき起こし、不眠にもなります。また、生殖機能にも影響を及ぼし、月経量が少ない、不正出血等の症状がでます。

気滞は、ストレス等により気の運行が不良となることをいいます。また、気の流れが停滞すると、血への転化がスムースにいかず血量・血流ともに悪くなるため、月経では遅れたり早くなったりします。

肝腎の陰液が不足しているところで、気滞により更に巡りが悪くなってしまうので、身体の隅々まで栄養を送ることが出来ません。また、気滞により上部に虚火(熱)がおこり、口や喉の渇き、五心煩熱(手掌・足底・胸に熱をもつ)、盗汗(寝汗)等が起こります。

PMS症状では、イライラや憂うつ、情緒不安定、胸やお腹が張る等の症状が出ます。

みられる症状
  • 眩暈
  • 健忘
  • 不眠
  • 耳鳴り(蝉の鳴くような)
  • 胸肋部疼痛
  • 足腰が冷えてだるい
  • 口や喉が乾燥
  • 五心煩熱(手掌・足底・胸に熱をもつ)
  • 盗汗
  • 月経過少
  • 脈細数又は弦
<治則>滋補肝腎・疏肝解鬱

肝血は腎を滋養し、腎精を生成します。また、腎精は肝を滋養し、肝血を生成します。このように、肝と腎は双方を補い、滋養し合っています。不足している肝と腎の陰液を補い、精血を充実させ、気がスムースに流れるようにします。更に、気をスムースに流してあげることで、身体全体に精血が流れるようになり、自ずと症状も改善されます。

4)気虚気滞

気虚気滞は「気」が足りていない状態に、更に流れがスムースでなくなります。

気虚気滞には2種類あります。i)気虚の状態に、ストレスなどがかかることにより、気滞が引き起こる ii)気虚が甚だしく、気が動かなくなり気滞となる場合の2種類です。

ストレスや肉体疲労などにより、気が不足した状態を「気虚」といいます。気が不足すると、推動力(全身の機能を動かす力)が低下するので、気に従って動く血も送る力が弱まります。筋肉・脳・各臓腑に栄養が行き渡らないため、やる気が起こらない、何をしてもすぐ疲れる、食欲不振などの症状がでます。

また、気が流れにくく滞っている状態を「気滞」といいます。気滞は、ストレス等により気の運行が不良になり、また、気の流れが停滞すると、血への転化がスムースにいかず血量・血流ともに悪くなるため、月経では遅れたり早くなったりします。また、イライラしやすい、胸やお腹が張るなどの症状がでます。

みられる症状
  • 全身倦怠感
  • 疲れやすい
  • 疲れるとイライラする(特に夕方)
  • 食欲不振
  • 頭痛(隠痛:我慢できない程ではないが、疲れるとジワジワ痛む。休むと改善される)
  • 月経不順(早くなったり遅くなったりする)
  • 胃やお腹の脹り(食後にお腹が張る)
  • 便秘または便溏(気の推動作用低下により、便意はあるが出す力が弱く、排便時に息切れする。また、出ると始めは固いが後は緩い)
<治則> 補気行気

気を流す力が不足し、気がスムースに流れず滞ってしまっている為、気を補いながら、流れに勢いをつけ気がスムースに流れるように治療していきます。

気を補うことで気や血の流れがよくなり、おのずと気の滞りも改善されます。

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