アトピー性皮膚炎とは、生後2~6ヶ月頃より始まる頭・顔、身体などに広がる痒みの強い湿疹のことを言います。ではまず、アトピー性皮膚炎を西洋医学・東洋医学では、それぞれどのようにとらえ、治療していくのかを簡単に見てみましょう。
西洋医学では、皮膚の機能異常または免疫機能異常により発症すると考えます。さまざまな治療方法がありますが薬によって症状を抑制させることが治療の主となります。(標準皮膚科学より)
一方、東洋医学では、さまざまな原因で身体が弱っているところに、外部の環境の変化=外邪(風・寒・湿・熱など)が皮膚に影響して発症すると考えます。個人の体質を中医学の診断法(四診法)によって分析し、その個人にあった方法で自然治癒力を高め、体質を改善して、アトピー性皮膚炎の症状が出ないよう治療をしていきます。
当院では、0才児のお子様から思春期以降になって発症された方など様々な患者様に対して治療を行い、満足していただいております。
それでは、さらに細かく西洋医学・東洋医学的観点から見ていきましょう。
アトピー性皮膚炎は、生活環境のあらゆるものが刺激となり皮膚炎を起こし、季節的に増悪軽快を繰り返します。また、年齢によって症状が変化します。
治療の基本は、かゆみを止めて患部をかかせないようにすることです。かゆみを止めるには、全身療法として抗プラスミン剤と抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤などの合剤を内服します。アトピー性皮膚炎は季節の変わり目(特に夏から秋にかけて)に再燃してかゆくなるので、そのつど短期間全身療法を繰り返します。
しかし、薬の副作用として、色素脱失・毛細血管の拡張・皮膚の感染症の悪化や誘発、慢性化などが起こる場合もあります。
当院では、アトピー性皮膚炎などの発疹を、中医学的に大きく3つのタイプに分けて治療します。
に分類されます。これらすべてのタイプが気候や温度変化など外部の環境の影響(外邪)を受けて、発疹が出ます。
では、タイプ別を細かく見ていきましょう。
タイプ | 治療 |
---|---|
気虚タイプ(気の不足) | 気を補い、気血の流れを改善 |
湿熱タイプ(湿と熱が皮膚に影響) | 熱を散らし、湿の停滞を改善 |
陰虚陽亢タイプ(水分が不足し、体内に熱がこもる) | 熱を散らし、水分の不足を改善 |
気虚とは、気をうまく作れなかったり、量が減ったりと気が不足した状態のことです。
原因として、長期の病気やストレスなどで身体の先天の気・後天の気が不足してしまうことでおきます。
アトピー性皮膚炎に特に関係する3つの気の作用について
などがあります。3つの気の作用が正常に働く事により、身体にアトピー性皮膚炎の原因となる外邪が侵入できなくなります。
気虚になると、疲れやすい・気力が出ないなど活動能力が低下してしまいます。また、気が不足すると推動作用・防衛作用・温煦作用も正常に働かず、体が外邪(外部の環境)の影響を受けてしまい、皮膚にアトピー性皮膚炎が発生します。
気は主な活動部位と働きによって、さらに3つに分けられます。
気虚タイプは、さらに肺気虚・脾気虚・腎気虚タイプに分かれます。
次に、肺気虚・脾気虚・腎気虚タイプそれぞれの原因と特徴的な症状を見てみましょう。
清気(肺気)・先天の気(腎気)・後天の気(脾気)のどの気が不足し、問題が起こっているかを四診法により弁証し、分析を行います。不足している気を補い、充実させ、気の作用が正常に働くようにします。気がめぐれば、血を巡らすことができ、外邪の影響を受けにくくなります。
湿熱タイプとは過剰な湿(水・脂)と熱が身体に溜まった状態です。原因として、
次に症状ですが、湿熱タイプは湿と熱のどちらが優勢であるかで症状が変化するのが特徴です。
湿熱の影響を受け皮膚の状態が悪くなると、皮膚から外邪が入りやすくなりアトピー性皮膚炎が発生します。
次に、肝胆湿熱・脾胃湿熱タイプそれぞれの原因と特徴的な症状を見てみましょう。
湿熱となった原因(体質)を四診法により弁証し、分析を行います。
身体の中の過剰な湿と熱を取り除き、排便・排尿などを促進して、身体の循環(気血の流れ)をさらに改善します。
陰虚陽亢タイプとは、1.身体に水が不足し、熱(虚熱)が発生しているタイプと2.ストレスなどで熱(内熱)が発生し、それにより体内の水分が損傷されるタイプとがあります。1・2共に、水分と熱の量が均等ではない状態です。例えるなら、火事が起こり、かける水が不足した状態です。
症状として、身体が細い、不眠、イライラなど、また皮膚の乾燥が生じます。また、皮膚の状態が悪いと風邪の影響を受けやすくなり、皮膚にアトピー性皮膚炎が発生します。
陰虚陽亢となった原因(体質)を四診法により弁証し、分析を行います。
陰虚陽亢の場合1.身体の水分が不足し、虚熱が発生しているタイプ2.ストレスなどで内熱が発生し、それにより体内の水分が損傷されるタイプがあります。
1は、水を吸収しやすくして、全身に水を巡らせます。そうすることで、全身を潤し、結果熱が取り除かれます。
2は、上に溜まっている熱を下に引き下げ、寒熱を均等にします。また、同時に全身を潤し、損傷した水分を補います。
両者とも熱が発生しにくい体質にします。